***道場寺***
豊島山(曹洞宗)道場寺

山間の夕闇は早い。
いつの間にか、家々の小さな灯りが遠くの方まで繋がり始めた。
つい今しがたまで、誰かの話し声が聞かれていたと思ったのに
振り返ると誰も居なくて、粉砂利を踏みしめる靴音だけがついて来る。
きっとあれは、水路の音だったのかも知れない・・・
先ほどまでの心地よかった風が、肩を冷やして過ぎ去って行った。
あぁ、ストールを持ってくるのだった。
はやく、家に帰ろう。

楽しい筈の旅先で感じる旅愁とは、
家庭の温もりを求めるが故の、人恋しさから生まれるのでしょうか。

♪・・・どこか遠くへ行きたい〜♪
永 六輔さん作詞の、“遠くへ行きたい”有名な曲ですよね。
短い歌詞の中に、そんな切なさが淡々と謳われているのを思い出しました。

さて、秋めいて、旅心をくすぐられる季節・・・になりましたね。
本日紹介致しますのは、、、、、人里離れた山奥の古寺
・・・ではなく、実は、都会の閑静な佇まいの住宅地にある古寺であります。

銘木のクロマツを右手に見て、参道を進むと美しい山門が現れます。
奥に見えるのが本堂、境内左手には、端整な三重の塔がありました。


鎌倉時代に建立された、豊島山道場寺です。
石神井城主、豊島景村の養子輝時(北条高時の孫)が、代々の菩提寺としたと伝えられているようです。

建築物もさることながら、手入れの行き届いた境内には、白萩が秋風に揺れておりました。


ユニークな石仏にも出会えました。
全部で何体あるのでしょうか。ずっと、こんな風に人々の生活を眺めてきたのでしょうね。
夫々が違った表情をしておりまして、
つい一緒に微笑んでしまったり、はにかんでしまったり、人間の表情は如何に多彩なものか。

・・・忘れていたわね、こんな優しい笑顔・・・

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